和包丁の形状と種類(Shape and type of Japanese knife)
最古の庖丁の遺品が現存するのは、奈良の正倉院だそうです。つばのない日本刀に似た形状で、総長38cmと41cm、正倉院展目録資料では鉄製の片刃。 この日本刀型庖丁は徳川初期に至るまでおよそ900年の間、主に魚用として使い続けられたそうです。現在の形は、徳川末期の文化文政年間の頃に、菜切、薄刃、出刃、蛸引が登場し、嘉永安政年間の頃に柳刃、江戸型うなぎ裂きが登場し、今に至っているそうです。(木屋)
魚と野菜が主たる食材であった日本では、様々な魚専用の包丁が存在しています。また、地方によっても同じ食材をさばくための包丁が全く異なる形状をしている場合もあります。
あじ切
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用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 90〜120mm |
業務用 | 片刃・両刃 | 90〜135mm |
小出刃
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用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 90〜120mm |
業務用 | 片刃 | 90〜135mm |
出刃
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魚をさばくために必須となる包丁の一つです。非常に厚く、重い刀身で荒さばきに用いられ、魚の頭を落とすなど、骨ごとたたき切る使い方にも対応します。一般的に「大出刃」や「本出刃」とも呼ばれます。大まかに分けた場合の出刃では、さばく魚に専用で板厚や形状を工夫した様々なバリエーションがあるのも特徴です。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 120〜180mm |
業務用 | 片刃 | 120〜300mm |
相出刃・卸出刃
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出刃包丁のなかで薄手に仕上げられたものです。薄手なので出刃に比べ三枚下ろしなどもやりやすく、そのまま刺身を仕上げる場合もあります。一般的に「中出刃」「卸出刃」と呼ばれ、身の厚みが薄く骨の切断などには向きませんが、通常の出刃より軽量なので取り回しやすく、魚以外の調理でも使われます。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 150〜180mm |
業務用 | 片刃 | 150〜210mm |
身卸し・舟行
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特に魚を下ろすことに特化した出刃包丁です。刀身の幅も狭く、板厚も薄くなっており、出刃に比べ三枚下ろしなどもやりやすく、そのまま刺身を仕上げる場合もあります。野菜などの調理などにも用いられます。舟行も同様の用途として用いられ、名前の通り漁師が船上で様々な調理をこなすために開発されたものです。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 150〜240mm |
業務用 | 片刃 | 150〜300mm |
鮭切 (さけ切)
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鮭のような大きな魚をさばく大型の出刃です。同サイズの出刃に比べると薄めに仕上がっており、季節的に多数の鮭を捌くことから劣化も激しいため、実用性を重視して表面を磨かない黒打ち仕上げになっています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 240mm |
業務用 | 片刃 | 240〜330mm |
柳刃・フグ引
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関西型の刺身包丁で、全国的に広く使われています。刃の先端のRが大きいものを「柳刃(柳葉)」、刃道が直線的なものを菖蒲の葉の形から「正夫(しょうぶ)」と区分けする場合もあります。あご部から切っ先まで一気に引き切る使い方が特徴です。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 180〜240mm |
業務用 | 片刃 | 240〜360mm |
フグ引
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柳刃庖丁の中でも特にフグや薄造りの刺身を仕上げる場合に用いられます。、柳刃包丁よりかなり薄く仕上げられており、刃道も直線で、薄く繊細なフグ調理に特化した構造になっています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 180〜240mm |
業務用 | 片刃 | 240〜360mm |
蛸引
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関東・特に江戸前で使用される刺身包丁です。刀身が四角い特徴的な形状で、喧嘩っ早い江戸の職人が使うことから、この形になったとの説もあります。柳刃包丁より若干薄く、流し物の切り分けにも使用されます。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 210〜240mm |
業務用 | 片刃 | 240〜360mm |
貝裂
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貝刺専用の柳刃型包丁です。身振りが小さな貝を刺身に仕上げたり、小細工を行うのに最適で、非常に短く、刀身も薄いのが特徴です。また、寿司店で用いられる「ばらん」(笹などを山や松に見立てて細工した飾り)を切るのにも使用されます。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 120〜150mm |
業務用 | 片刃 | 120〜150mm |
薄刃 (角型薄刃)
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野菜の調理に必ず用いられる包丁で、刃元で野菜の皮むきやくり抜きに、中央部でかつら剥き、つまなどの細工・きざみ・面取などほとんどの野菜調理を1本でこなします。通常の角型の薄刃包丁は関東型で、洋包丁の薄刃とは形状が似ていますが、和包丁は片刃になっています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 150〜165mm |
業務用 | 片刃 | 150〜240mm |
鎌型薄刃
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関西型の薄刃包丁で切っ先が尖っていることから、切っ先で飾り切りやそぎ切り、細工などにも使用できます。関東型の場合、同様の使い方をする「むきもの細工包丁」があり、鎌形に比べ峰の丸みが無く、菱三角形形状になっています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 片刃 | 150〜180mm |
業務用 | 片刃 | 150〜240mm |
ハモ切
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ハモやアイナメなど小骨の多い魚をさばく包丁で、骨切ともよばれます。非常に大きく厚みもあるので、重さを利用して小骨を切りさばいていきます。峰は非常に厚い割には切刃を広く取っており、非常に鋭い刃が付いています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | ー | ー |
業務用 | 片刃 | 270〜360mm |
まぐろ切り
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マグロを解体するのに用いられる、長く日本刀のような形状の包丁です。大きなマグロを半割りにするために、1.5mの長さのものもあり、職人二人で切り分ける作業など、非常に豪快な包丁ですが、折れや曲がりに強い、粘りのある刀身に仕上げられています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | ー | ー |
業務用 | 片刃 | 400〜1500mm |
うなぎ裂き (東型)
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うなぎ裂きは地方により形状に非常にバリエーションがあり、この型は東型(江戸型)と呼ばれます。「腹切り」が縁起が悪いため、切っ先を用い背開きでさばきます。小型のものはドジョウ裂きやアナゴ裂きとして使用されますが、この場合は腹開きでさばきます。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | ー | ー |
業務用 | 片刃 | 180〜240mm |
うなぎ裂き (京型)
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京都近辺で使用される、うなぎ専用の包丁で鉈のような形状をしています。うなぎの幅に合わせた非常に小振りの包丁で、腹開きで使用します。峰の出っ張りを利用して目打ち(うなぎを固定する釘)を叩くことができます。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | ー | ー |
業務用 | 片刃 | 70〜100mm |
うなぎ裂き (名古屋型)
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名古屋近辺で使用されるうなぎ裂きで、細長く長方形。柄が若干長く、峰の先でうなぎを傷つけないよう丸めてあります。
他、大阪近辺で使用されるうなぎ先は、彫刻刀や切り出しナイフに近い形で、柄が付いておらず、腹開きでさばきます。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | ー | ー |
業務用 | 片刃 | 100mm程度 |
菜切
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家庭で使用される野菜用の包丁です。磨きの工程を省いた黒打ちのものと、磨きを入れたものがあり、刃は非常に薄く両刃仕上げになっています。かつてはほとんどの家庭で見かけることができたが、最近は三徳包丁に取って代わられています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 両刃 | 150〜165mm |
業務用 | ー | ー |
菜切 (関東型)
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関東で使用される菜切包丁で、通常の菜切に比べ全体的に丸みを帯びています。ほとんどが黒打ち仕上げになっており、打ち刃物で作られています。峰先端の尖った部分を使用し、芽取りなどに使用します。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 両刃 | 150〜165mm |
業務用 | ー | ー |
三徳
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菜切包丁と牛刀包丁の良いところを合わせた家庭用包丁で、野菜から肉・魚の調理に万能に使えます。両刃で洋包丁と同じ構造です。文化型は先端を斜めに切り落とした形状で三徳包丁の原形になりましたが、ほとんど見かけることはなくなりました。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | 両刃 | 165〜170mm |
業務用 | ー | ー |
寿司切り
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巻き寿司や押し寿司を切るための専用の包丁。両刃で幅が広く刃が丸い形状なのが特徴で、切っ先を押し入れ、手前に引きながら向こう側に押し上げて切り、ご飯や具がくずれないように工夫が施された形です。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
---|---|---|
家庭用 | ー | ー |
業務用 | 両刃 | 240mm |
そば切り
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麺の中でも特に蕎麦を切るための専用の片刃包丁。重みがあり刃渡りが広く刀身が四角く、一度で1本の麺が切れるよう水平な刃が付いています。持ち手部は使う人の好みで、紐や革を捲いたりできるよう、そのままの仕上げで販売されることもあります。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
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家庭用 | 片刃 | 210〜240mm |
業務用 | 片刃 | 240〜360mm |
和包丁の形状と種類(Shape and type of Japanese knife)
麺切
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うどんやきしめんなどを切るための包丁で、そば切り包丁と違い両刃の刃が付いています。そば切りは刃を垂直に立て押し切りしますが、麺切りは普通の包丁の使い方に近く、柄の形状なども全く違っています。
用途 | 刃の構造 | サイズ |
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家庭用 | 両刃 | 180〜210mm |
業務用 | 両刃 | 210〜270mm |