銃の話題(Topics of guns)
TAC-50ライフル
カナダ兵、3.5キロ先のISIS戦闘員狙撃イラク第2の都市モスル奪還作戦を支援しているカナダ軍特殊部隊は2017/6/23日までに、狙撃兵が3540メートル離れた距離から、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦闘員を狙撃することに成功したと発表しました。
カナダ軍特殊部隊は現在、モスル奪還を目指すイラク治安部隊の後方で援護と助言に当たっています。3540メートルからの狙撃成功は世界記録となります。安全上の理由から、狙撃兵の名や、狙撃した状況などの詳細は公表していません。 これまでの長距離狙撃記録は、2009年11月に英国の兵士が反政府武装勢力タリバーンのメンバー2人を殺害した際の2474メートルでした。
カナダのグローブ&メール紙によると、今回の狙撃はイラクでこの一ケ月の間に実施された作戦の中で実行されたそうです。マクミランのライフル銃「TAC-50」を使って高い場所から狙いを定め、10秒以内に命中させたとしています。関係者は、この狙撃によってISISのイラク軍に対する攻撃を妨害できたと話しているそうです。 3540メートルの世界記録は、まだ第三者機関には認定されていません。
(2017/6/23 CNN.co.jp)
内容(Contents)
- 大口径ライフルを用いた遠距離射撃の世界では日々誰かが記録に挑戦しています。2016年04月26日には、4210ヤード(約3849メートル)先の36インチ(0.91メートル)のターゲットを撃つ記録が達成されています。 記録を更新したのは、ヒル・カントリー・ライフル(Hill County Rifles)のチーム。使用されたライフルはフルカスタムのもので、.375口径のアクションをマクミランのA3/5ストックにフィットさせています。スコープはナイトフォースベスト(Nightforce Beast)。銃身がかなり上を向くためゼロインは100ヤード(約90メートル)先に高さ16フィート8インチ(約5メートル)のターゲットを設置して行われたそうです。
- TAC-50は、アメリカのマクミラン社(McMillan Brothers Rifle Company)が開発した、.50口径のボルトアクション式対物ライフルです。同社は1980年代にいくつかの.50口径ライフルを開発していて、TAC-50はそれらのライフルをベースとして設計されました。5発入り箱型弾倉を使用し、銃口部には発砲時の衝撃を軽減するための巨大なマズルブレーキが備わっていいます。可変式のチークピースが装着されたバットストック部は長さが調節可能で、横に折り畳んだり取り外すことも可能となっています。軍・法執行機関向けに開発された本銃は、2000年にはカナダ軍がLRSW(Long
Range Sniper Weapon = 長距離狙撃銃)として「C15」の名称で採用しています。またアメリカ軍のSEALも「Mk.15」の名称で採用しています。 なお、同アメリカのシグサワー社からも「SIG-50」の名称で、ほぼ同仕様の製品が、OEM販売されています。
(Photograph from Wikipedia)
- 使用装弾は、12.7x99mm弾 (.50 Browning Machine Gun, .50BMG) で1910年代後半にジョン・モーゼス・ブローニング(John Moses Browning)によって開発された銃弾です。1921年に軍に正式採用されたこの.50BMGのデザインは30-06弾に基づいています。この銃弾は誕生以来様々な派生型が開発されており、その一例としてフルメタルジャケット、曳光弾、徹甲弾、焼夷弾、サボット(装弾筒)弾が挙げられます。この12.7mm弾は狙撃銃に使用して長距離狙撃を行う際にも使用され、この際に使用されるのは通常の掃射用機関銃弾とは異なる高精度弾薬であり、ボルトアクションもしくはセミオートのスナイパーライフル(対物ライフル)から発射されます。
- 3.5キロは、およそ新宿駅から渋谷駅の距離です。.50ブローニングの初速は約890m/sですから、撃った弾が到達するまで、およそ4秒〜7秒かかります。音速が340m/sですから、着弾して3〜6秒後に銃声が聞こえます。