M1911のモデルガン(Toy gun)
モデルガン(Model gun)は、銃器の外観や機構を模した遊戯銃(トイガン)の一種で、弾丸を発射する機能を持たないものを言います。低空気圧又は低圧ガスによってプラスチック製のBB弾と呼ばれる球形の玩具弾を発射するエアーソフトガンは、銃器(けん銃、小銃、機関銃等)を模した玩具銃の一種で、銃器やモデルガンとは区別されます。報道などでは同一に扱われることが多く、日本では銃砲刀剣類所持等取締法により、材質や構造、色などに制限が加えられています。 モデルガン(Model gun)は和製英語で、英語では火薬(玩具煙火)を使用するトイガンをキャップガン(Cap gun)と呼びます。歴史(History)
日本のモデルガンの歴史は、1960年代初頭、上野御徒町の中田商店が米国製のマテル社(Mattel Inc.)、ヒュブレー社(Hubley Manufacturing Company)現在はガブリエル工業(Gabriel Industries)、などの子供向け玩具銃であるトイガンを輸入販売したのが始まりと言われています。やがて、日本モデルガン協会(後のMGC)は、ヒュブレー社のトイガンを改造して、銃身、マガジン、ハンマー、撃針を取り付け、モデルガンを生み出します。「モデルガン」はMGCの作った造語で今日まで定着しています。この後MGCがモデルガンを生産し、中田商店、マルゴー商店、江原商店(後の東京CMC)などの上野御徒町周辺の商店が販売を手掛けますが、1965年にMGCは同業者組合を脱退し、他社へのモデルガンの供給をストップし製造直売の路線形態をとります。
一方、供給を絶たれた販売業者は、中田商店の呼びかけで、日本高級玩具製造組合を結成し、中田商店はTRC(東京レプリカコーポレーション)、ホンリューはハドソン、江原商店は東京CMC、マルゴーはマルゴーでモデルガンの生産を開始します。 日本高級玩具製造組合は、中田商店の六人部登(むとべ のぼる)氏に無稼動文鎮モデルを製造させ、マルシンダイカストにブローニング.380やPPK等のMGC製品をフルコピーさせて、組合のオリジナル商品として販売しました。 また、小売り店組合側は、六人部氏にMGC製品コピーでないオリジナル・モデルの設計を委託し、1965年9月、東京CMCがMGC以外の国内第1号モデルガンのコルト・ガバメントを発表します。 六人部氏は、トイガンとしての作動性能よりも実銃の外観、メカニズムの再現性を重視する作品が多いのが特徴で、作動性能を重視するMGCのトイガンデザイナー小林太三(こばやし たぞう)氏の作品とは趣きが異なっていました。
- 1946年(昭和21年)、銃砲等所持禁止令が施行され、民間人は狩猟用や射撃競技用を除いて、銃器類を所持することができなくなりました。
- 1962年(昭和37年)、ハドソン産業より国産モデルガン第1号のモーゼル軍用自動拳銃C96が発売されました。亜鉛合金製のオートマチック式拳銃で、初期のみ「国際ガンクラブ」と表記されていました。
- 1964年(昭和39年)、六人部登氏の設計によるルガーP-08が中田商店から発売されます。このモデルは、現在「タニオアクション」と呼ばれている機構が採用されたもので、実銃の外観、メカニズムの再現性を重視する六人部登氏が設計した唯一の指アクションのモデルガンです。
- 1966年(昭和41年)、CMCより初の、亜鉛合金製の金属モデルガンが発売されます。38口径の非発火モデルのガバメントでした。
- 同年、MGCより、亜鉛合金製発火モデルガンGM1が発売されます。52年規制で発売中止となるまで生産されたため、黒色で銃腔が空いているモデルと金色で銃腔閉鎖モデルがあります。
- 1967年(昭和42年)、CMCより45口径の発火仕様に変更されたセカンドモデルが発売されます。MGCのマガジンが流用されたため、グリップの長さが短かく、刻印は独自のものでした。
- 同年、六人部登氏は中田商店から独立し、六研を設立します。
- 1971年(昭和46年)、銃刀法改正により模造拳銃の所持が禁止されました。
金属製で、拳銃に著しく類似する形態を有する物は、銃腔を金属で完全に閉塞し、銃把を除く表面全体を白色又は黄色に着色しなければ所持が認められなくなりました。この規制の背景には、当時造りが精巧な金属製モデルガンが強盗や恐喝などに威嚇目的で悪用される事案が多発した経緯があり、規制の前年1970年にはハイジャックにも使用されました。 - 1972年(昭和47年)、六研の1期真鍮ガバメントが発売されます。これは六人部登氏にとって、CMCに次ぐ2作目の設計でした。この当時、モデルガンのガバメントは、MGCがGM1を虹色メッキしたものと、CMCの初期型を金色メッキしたものの2種のみで、真鍮ガバメントにはこのGM1のマガジンが利用されていました。
- 1975年(昭和49年)、MGCより、ABS樹脂製発火モデルガンGM2が発売されます。初期型はセンター式ブリーチでシリアルナンバー付き。1978年(昭和53年)にサイドプレート式に改められます。スタンダードとブローバックが存在します。
- 1976年(昭和51年)、CMCはサードモデルのミリタリ・コマンダとナショナルマッチの3機種を発売します。このモデルはフレームが延長されリアルサイズとなり、実銃マガジンが使用できるようになりました。
- 同年、六研の3期真鍮ガバメントが発売されます。スチールパーツはCMCのロストワックスが使用されていました。
- 同年、MGCより、亜鉛合金製発火モデルガンGM3が発売されます。GM2の金型を使用して生産されました。
- 1977年(昭和52年)、銃刀法改正により販売目的の模擬銃器の所持が禁止されました。
金属製モデルガンの改造防止規準が法令でさだめられ、これに適合しない物は販売できなくなりました。
オートマチックはバレルとレシーバーが一体鋳造され、バレル基部に改造防止のインサートが鋳込まれている物は販売が認められましたが、バレルが取り外せる銃身分離型はトリガーが直接連動する、通称タニオアクションを除いて販売できなくなりました。
リボルバーは、バレル基部とシリンダー前部に改造防止インサートが埋め込まれ、シリンダー薬室相互間の隔壁が切断されている物は販売が認められましたが、バレルが取り外せる中折れ式は販売できなくなりました。
自動小銃やマシンガン等の長物はバレルとレシ−バーが一体鋳造され、バレル基部に改造防止インサートが鋳込まれている物は販売が認められましたが、主要パーツの硬度規制によりスチール製の物は販売できなくなりました。
玩具銃の業界団体は、法令で定める改造防止規準に適合する金属製モデルガンにSMGマークを付することを定めました。
この規制の背景には、当時暴力団の武装化に伴い改造拳銃が大量に密造、密売された経緯があり、この規制の前年1976年に押収された拳銃1697丁のうち1016丁が改造モデルガンでした。 - 1979年(昭和54年)、MGCより、ABS樹脂製発火モデルガンGM4が発売されます。GM2をベースとしたゴールドカップナショナルマッチモデル。スライドは新規金型でフレームはGM2が流用されました。発売当初は完成品のみでしたが、のちにキットモデルが発売されます。
- 1983年(昭和58年)、MGCより、ABS樹脂製発火モデルガンGM5が発売されます。GM1からGM4まではフレームが実銃より短いサイズでしたが、GM5ではすべて新規製作となりリアルサイズとなりました。擬似ショートリコイルを採用し、以降のガバメントシリーズはGM5の改良型になります。
- 1991年(平成3年)、MGCの開発主任で副社長の小林太三氏は独立し、タニオ・コバを設立します。
- 1994年(平成6年)、MGCは生産部門を廃業し、製造を担当していた関連会社「新日本模型」がブランドを引き継ぎ製品を再生産していましたが、同社も2006年末に製造設備の解体・売却を行い、製造活動を終了します。
- 1995年(平成7年)、廃業した、CMCの製品金型の一部はタナカワークス、ハートフォード、クラフトアップル等に引き継がれ発展して行きます。
- 1996年(平成8年)、六研が設計・製造した、リアル・マッコイズ、ブランドのロックライト製スプリングフィールドM1911が発売されます。このモデルは、実銃とまったく同じサイズ及びメカニズムをもったガバメントとして知られています。
- 同年、ホビー・フィックスより、比重6.7の高比重樹脂「メガ・ウェイト」によるM1911A1が発売されます。重量は実銃に近い1,070gで、スライドやフレームの厚さなども実銃とまったく同じ寸法で作られていました。
- 1999年(平成11年)、六研が設計・製造した、リアル・マッコイズ、ブランドのスーパーロックライトR製『COLT&MCCOYS M1911』が発売されます。このモデルは、実銃とまったく同じサイズでしたが、装填・排莢はできませんでした。ケースは透明アクリルで、シリアルナンバー入りのカードが付いていました。コルト純正アクセサリーとしても知られています。
- 2001年(平成13年)、ホビー・フィックスより、亜鉛合金製の非発火モデルガンM1911A1が発売されます。1977年の銃刀法改訂で銃身分離型のハンドガンの製造が中止になって以来、金属製ガバメントが発売されるのは24年ぶりのことでした。「クワック・ショット・アクション」と呼ぶ機構は、銃刀法に抵触せずに金属製ハンドガンを製造できるという点に着目して設計されたものでした。マガジンは上部と底部だけを見せる固定式で、カートリッジは否装填型でチェンバーは塞がれています。また、ハンマーは引けても固定されず、マニュアル・セイフティーも動作はしますが機能はしないという、設計がされています。
- 2003年(平成15年)、六研が設計・製造した、リアル・マッコイズ、ブランドの『COLT&MCCOYS M1911』装填・排莢モデルが発売されます。このモデルは
新たにダミーカードリッジの装填・排莢操作が行えるようになり、これにともなってスチールインサート入りのエジェクター及びオープンタイプのバレル(日本遊戯銃協同組合自主規約適合品)を新規採用、エキストラクターにも改良が加えられました。各部品の形状や各部の設計、加工法、刻印や打刻などの考証はコルト純正アクセサリー『COLT&MCCOYS
M1911』とまったく同じです。
- 2005年(平成17年)、ホビー・フィックスより、亜鉛合金製の非発火モデルガン、ガバメント・シリーズ70が発売されます。M1911A1同様の「クワック・ショット・アクション」と呼ぶ機構が採用され、マガジンは上部と底部だけを見せる固定式で、カートリッジは否装填型でチェンバーは塞がれています。また、ハンマーは引けても固定されず、マニュアル・セイフティーも動作はしますが機能はしないという、設計がされています。
- 2006年(平成18年)、ホビー・フィックスより、亜鉛合金製の非発火モデルガン、ガバメント・コマーシャルミリタリーが発売されます。
- 2007年(平成19年)、クラフトアップル(CAW)は1943年製のM1911A1 U.S.アーミー・モデルを発売します。このモデルは、実銃を米国で実際に購入して採寸し、設計したと言われています。実銃とまったく同じサイズで製作され、部品構成も実銃とまったく同じということです。同社のホームページで、試作品と実銃を組み合わせた写真が載せられていました。
- 2008年(平成20年)、ホビー・フィックスより、亜鉛合金製の非発火モデルガン、ガバメント・戦前ナショナルマッチが発売されます。